自宅レコーディングスタジオ【前編】快適防音室でつくる
プロ仕様の音環(huán)境

場(chǎng)所は、千葉県香取市佐原。夏と秋に「佐原の大祭」が開(kāi)かれ、「佐原の山車行事」としてユネスコ無(wú)形文化遺産にも登録されています。祭りの日には、日本三大囃子（ばやし）といわれる佐原囃子の笛や鼓が響きわたり、音楽が暮らしに深く根付いている土地です。

しかし、このまちには本格的な音楽スタジオがありませんでした。そこでKさまは「せっかくスタジオを建てるなら、自分やアーティスト、仕事仲間だけじゃなく、誰(shuí)でも気軽に來(lái)られる商業(yè)スタジオをつくろう」と考えられました。

スタジオの名前は「Slowly Takes Studio」。徹底して音響にこだわったスタジオが完成し、いよいよお披露目となり、オープンすると???。

どこからともなく噂を聞きつけ、プロの演奏家やバンドミュージシャン、軽音部の高校生たち、趣味として楽器演奏を楽しむ人たちなど、これまで姿を見(jiàn)せなかった人々が、市內(nèi)から、隣のまちから、県外から、続々とスタジオへ集まってきたのです。

人々を惹きつけたのは、Kさまと大和ハウスチームが二人三腳で創(chuàng)り上げた理想の音環(huán)境。快適防音室「音の自由區(qū) 奏でる家」の集大成ともいえるスタジオでした。

この記事では、レコーディングスタジオ設(shè)計(jì)?施工のテクニカルなポイントや、住まいとスタジオを両立させた暮らし方などを前?後編にわたってお屆けします。

建物の構(gòu)成

正面：スタジオのファサード

裏面：住居のファサード

1階はレコーディングスタジオと住居、2階は住居

このプロジェクトは土地探しからスタートしました。大和ハウスがご提案した土地は、敷地の正面と裏面が道路に接しており、建物に“スタジオ”と“住宅”という2つの顔を持たせるのに良い條件が整っていました。祭りの日に山車が練り歩く駅側(cè)（正面）は、ミニマルなファサードが印象的なスタジオの顔。住宅街側(cè)（裏面）は、上品な戸建住宅の佇まいを見(jiàn)せています。

建物內(nèi)は、1階がレコーディングスタジオと住居空間（主寢室や書斎）、2階が住居空間（LDK、水回りなど）で構(gòu)成されています。

※概念図

※概念図

スタジオでバンドセッションの大音量が鳴っていても、1?2階の住居空間でほとんど気にならないのは、「音の自由區(qū)」の最高グレード「奏でる家＋」だからこそ。ドラムを大音量でたたいても、室外や屋外では“図書館並みの靜けさ”にまで減音できます。ここまで減音できるのは、プロ用レコーディングスタジオや劇場(chǎng)レベルの遮音性能に相當(dāng)します。

この「防音技術(shù)」をベースに、プロが求める「音響性能」をプラスしたのが、今回のレコーディングスタジオです。

ホール

では、「Slowly Takes Studio」の扉を開(kāi)けて、スタジオスペースへ入っていきましょう。

ホールは、明るさを抑えて陰影のある空間に仕上げました。受付カウンターはDJブースを兼ね、音楽とスマート照明システムを連動(dòng)させて、空間の雰囲気を変えることもできます。

カウンター左側(cè)にあるドアは、ミニキッチンと納戸のあるバックヤードと、その奧にある住居スペースにつながっています。 “仕事場(chǎng)”と“住まい”が近い併用住宅の良さを?qū)g感できるポイントです。

続いてスタジオの中へ。Kさまと大和ハウスがプロ仕様の音響を追求した空間をご案內(nèi)します。

Aスタジオ | バンドセッション

【設(shè)計(jì)?仕様のポイント】①天井高 ②斜めの壁 ③ベーストラップ ④石壁 ⑤天井の吸音材 ⑥空調(diào)スペース ⑦ボーカルブース

高い天井が生む自然な殘響

Aスタジオは、バンドのレコーディングや練習(xí)を想定したメインのスタジオです。

このAスタジオを含む1階スタジオスペースにおける最大のポイントは「天井の高さ」です。

天井が高い空間は、音が減衰するまでの距離が長(zhǎng)くなり、自然な殘響が生まれます。ところが一般的な防音室は、完成した住宅の中にもう一つ「箱」を入れるような造りのため、天井が低くなりがちです。

それに対して「奏でる家」は、建物一體で防音施工ができるため、天井を高く、空間を広く取ることができます。

Kさま邸のベースにした「xevoΣ（ジーヴォシグマ）」は、もともとの天井高が2m72cm^※ありますが、1階スタジオスペースはさらに大和ハウスが誇る「ロースタイルリビング」方式で床を掘り下げて2m83cm①に。天井に取り付けた空調(diào)機(jī)器の出っ張りまでミリ単位で調(diào)整し、可能な限りの高さを確保しました。

※天井高は2m40cm、2m72cm、さらに2m80cm、3m8cmと3m16cm（1階のみ）の仕様を選ぶことができます。
天井高については間取りや建設(shè)地、建築基準(zhǔn)法（法令）等により、対応できない場(chǎng)合があります。

音を亂反射させる斜めの壁

レコーディングスタジオで求められるのは、特定の音域だけが際立つのではなく、全ての周波數(shù)の音が均一に響く空間です。ところが、壁が平行な四角い部屋では「定在波」が発生しやすく、特定の周波數(shù)だけが強(qiáng)まります。特に低音は、壁と壁の間で反射を繰り返し、他の音よりも大きくなってしまいます。

そこで、1辺の壁②を斜め（「く」の字型）にして、音の反射方向を分散させ、音が拡散しながら減衰するようにしました。

さらに、壁の一部に、裏側(cè)に音が抜けるベーストラップ③を組み込み、問(wèn)題となる低周波數(shù)帯を吸音。低音のこもりを抑え、すっきりとした響きを得られるようになっています。

デッドとライブの絶妙なさじ加減

生の音に近いクリアな音を録るために、音の反射と吸音のバランスを細(xì)かく調(diào)整。ドラム背面の荒々しい石壁④は、音を拡散しつつ、音のパワーを前に押し出す効果があります。撮影や配信でも映える內(nèi)裝です。

天井⑤には、厚みの異なる吸音材を貼り分け、周波數(shù)帯ごとに吸収する音をコントロールしています。

また、レコーディングスタジオはデッドに仕上げるのが一般的ですが、Kさまのご要望に沿って、自然な音場(chǎng)感を得られるよう、若干ライブ寄りに振っています。

NC値10?15の圧倒的な靜けさ

防音性能D-70^※1を超える「奏でる家＋」の防音と空調(diào)⑥の音対策として、吸音ダクトとサイレンサーを使用。その結(jié)果、室內(nèi)の靜けさを示すNC値^※2は10?15と非常に低く、プロの録音スタジオ並みの靜音環(huán)境になっています。

また、レコーディング中はノイズ対策で空調(diào)を止めることがあるスタジオも多く、夏はかなり過(guò)酷な狀況になります。しかし、このスタジオの空調(diào)は、防音対策を施してレコーディング中でも使用できるようにしているため、暑い夏や寒い冬でも快適です。

ボーカルブース

バンドメンバーと視線をつなぐガラス窓

Aスタジオの隣にあるボーカルブース⑦は、防音ガラス越しにお互いの姿を確認(rèn)。バンド演奏とボーカルを同時(shí)収録する際も、アイコンタクトやジェスチャーでタイミングが合わせられます。

ボーカル以外にも、アコースティックギターやホーンセクション、バックコーラス隊(duì)が入れるように、少し広めのスペースを確保。また、窓ガラスは音の拡散を狙い、斜めに設(shè)置しています。

Bスタジオ | グランドピアノ

大屋根から飛び出す音を、壁で広げる

ここはピアノ専用のスタジオです。ピアノの響きを生かすために、左右2面を石張りにして、音をほどよく反射?拡散させました。ピアノの音は一度、ふた（大屋根）に當(dāng)たってから右へ飛び、その後、反射して左へ。音が分散して広がることで、気持ちよく演奏できるようにしています。

コントロールルーム

音の位置を“見(jiàn)えるように”聴く

録音?編集のためのコントロールルームは、正確な音をモニタリングするために、完全左右対稱に設(shè)計(jì)しています。正面に設(shè)置したモニターで必然的に反射が生じるため、併せてモニター背面の壁も、音を反射する石張りに。その結(jié)果、センター定位の音像がいっそう鮮明に感じられ、Kさまにとっては偶然が生んだ新たな発見(jiàn)になったそうです。

電源環(huán)境

専用電源でノイズを抑える

スタジオの電源は3種類。音響専用の100V（白）と120V（赤）、一般家庭用の100Vを備えています。白と赤は、トランス（変圧器）を通してノイズを抑えたクリーンな電源に。特に120Vは、海外仕様のギターアンプなどとも相性が抜群です。

プロが認(rèn)めた音空間

このスタジオは、音楽家のKさまと、大和ハウスの音の研究員や設(shè)計(jì)擔(dān)當(dāng)者、インテリアコーディネーター、工事?lián)?dāng)者らのチームメンバーが意見(jiàn)をぶつけ合い、知恵と経験を惜しむことなく出し合って完成させた結(jié)晶です。

また、レコーディングスタジオは、建物そのものが音の質(zhì)を左右する大きな要素ではありますが、竣工後、実際の音を確認(rèn)してチューニングすることで、より理想的な音環(huán)境に近づきます。

Kさまも當(dāng)初は、竣工後に吸音?拡散パネルなどで調(diào)整するお考えでした。ところが、Kさまが行ったテストレコーディングでは大きな問(wèn)題がなく、「手を加えなくても現(xiàn)狀のままで使えそう」とのこと。これまで數(shù)多く都內(nèi)のスタジオを利用されてきたKさまから、「求めていたプロユースのレベルに達(dá)している」とご評(píng)価いただきました。

さて、後編では、このスタジオと住居部分がどう共存しているのか、大和ハウスチームがこの建物をどう形にしていったのか、さらにはスタジオを?qū)g際に利用された人の聲もご紹介します。“スタジオのある暮らし”や“リアルな聲”に興味のある方は、ぜひ続けてご覧ください！