始まりは「どうして毎日遊んで暮らせないのか」という問(wèn)い

1號(hào)は「水をのむ」、2號(hào)は「米をくう」。一見(jiàn)、農(nóng)業(yè)雑誌にも見(jiàn)えますが、おぼけんさんは「新百姓」という言葉を「つくるを楽しむ人々」と定義づけています。取材対象は人類(lèi)學(xué)者や最先端テクノロジーの起業(yè)家、街の老舗で働くおばちゃん、すぐ隣にいそうなあの人まで——。さまざまな角度から、毎號(hào)のテーマを掘り下げています。

2022年に創(chuàng)刊した雑誌『新百姓』。

「『新百姓』の原點(diǎn)にあるのは、これだけ便利で豊かになったのに『なぜ僕らはいまだに毎日遊んで暮らせないのか』というシンプルな問(wèn)いです。僕らは働くのが當(dāng)たり前で、自分の能力を示して他者より稼ぐことが幸せだと思っている。そして、幸せでない人たちは努力を怠っているという考え方を信じ込んでいる。でも果たして本當(dāng)にそうなのだろうか、と」。

『新百姓』のウェブサイトのトップ?！袱胜既祟?lèi)はいまだに毎日を遊んで暮らすことができないのか？」という言葉が印象的です。

そんな問(wèn)いを持つに至った背景には、子ども時(shí)代の出來(lái)事が大きく関わっています。

「父は、大分県で兼業(yè)農(nóng)家をしていました。平日は別府市內(nèi)で働き、週末になると車(chē)で1時(shí)間ほどの祖父母のところに行って、家族みんなで農(nóng)作業(yè)をする。僕は子どもながらに、それが好きだったんですね。田んぼは格好の遊び場(chǎng)だったし、親戚や近所の人が集まるのも楽しい。風(fēng)景もすごくきれいで、秋になったらおいしいお米まで穫れる。ところが大學(xué)生になった時(shí)、父親が田んぼを辭めると言い出しました。理由を聞いたら金にならん、と。僕はその時(shí)、こんなに楽しくて美しくておいしい営みが、儲(chǔ)からないという理由だけでなぜなくなるんだろうと思いました。そこから資本主義に対する漠然とした問(wèn)いを持ったんです」。

証券會(huì)社でフィールドワーク。1年で辭めるつもりが……

おぼけんさんは金融と経済の本質(zhì)を調(diào)べようと、1年間だけと決め、証券會(huì)社に就職しました。大學(xué)では文化人類(lèi)學(xué)を?qū)Wんでいたこともあり、「金融業(yè)界へフィールドワークをしに行く」つもりだったそう。しかし、2年目に入ってリーマンショックという未曾有の金融危機(jī)が起こりました。

「最初に株価が下がりだした時(shí)、社內(nèi)の証券アナリストは『一時(shí)的な下落だから買(mǎi)い』と言うんです。そうしたら、あっという間にお客さんの資産が半分になりました。ああ、金融のプロといわれている人たちも本當(dāng)のところはよくわかっていないんだな、と。さらによくよく考えたら、僕はブラジル國(guó)債を売っていたけどブラジルに行ったことがない。インドの鉄道株をお?jiǎng)幛幛筏皮い郡堡丧ぅ螗嗓摔庑肖盲郡长趣胜?。たぶん証券アナリストも同じで、レポートを読んでいるだけ。それで、ちゃんと現(xiàn)場(chǎng)に行こうと思ったんです。會(huì)社を辭めてバックパッカーになって、世界中を旅しました」。

顧客の資産が元に戻ったのを見(jiàn)屆けてから証券會(huì)社を離れ、2年間、世界各國(guó)でのフィールドワークに乗り出しました。ロンドンや上海など各地の証券取引所、インドの鉄道建設(shè)予定地、ボリビアのポトシにある世界最大の銀鉱山……。おぼけんさんは、訪問(wèn)した47カ國(guó)すべてで、米ドルの100ドル札とユーロの50ユーロ札、日本円の1萬(wàn)円札を、現(xiàn)地の正規(guī)の両替所と民間が街で開(kāi)いている両替所の両方に持っていき、レートがいくらかを聞いて回りました。すると、日本円の1萬(wàn)円札が通用しないところがありました。

「エチオピアのハラールという街です。米ドルとユーロは大丈夫だったけど、日本円は交換できなかった。このことが何を意味しているかというと、僕らが後生大事にしているお金、日本銀行券は、日本というカルチャーや政治経済の影響力が及ばない範(fàn)囲まで行ったら、ただの紙くずになるということです。それで結(jié)局、資本主義はただの物語(yǔ)というか、寓話なんだと気がつきました」。

『新百姓』の価値基軸になっているのは「つくる喜び」

資本主義を懐疑的なまなざしで見(jiàn)つめるものの、おぼけんさんのスタンスは「脫?資本主義」ではありません。旅の中で資本主義の光も闇も見(jiàn)てきたからこそ、資本主義自體を否定するのではなく"ツールとして扱う"ことが大切だと考えました。資本主義は、唯一絶対のシステムではなく、目的に応じて用いることも、用いないことも選べるもの——それを伝え、問(wèn)いかけていく手段として選んだのが、『新百姓』でした。

「メディアは、全然違うものの見(jiàn)方や評(píng)価の仕方を提示することができますよね。だから、小さな労力でテコの原理がもっとも大きく働くのはメディアじゃないかと思ったんです」。

時(shí)価総額や資産の多さといった資本主義的なモノサシではなく、大企業(yè)の社長(zhǎng)も失敗した経営者もアーティストも伝統(tǒng)工蕓の職人も農(nóng)家の人も、全員に共通した価値基軸が何かを考えました。そこで気づいたのが「つくることに夢(mèng)中になっている狀態(tài)」は、すべての人にとって等しい価値だということでした?！甘工θ恕─螘r(shí)代（Capitalism=資本主義）から、つくる人々の時(shí)代（Creativitism=創(chuàng)造性主義）へのパラダイムシフトの提案」ですと、おぼけんさんは続けます。

「例えば、みなさんが知っている『アリとキリギリス』は、コツコツ働いたアリが偉くて、遊び呆けたキリギリスに天罰が下るというお話ですよね。だけど僕は別バージョンも考えられるんじゃないかと思っていて。キリギリスはただ音楽に熱中して、楽しんでいた。そのせいで冬の食糧の蓄えができなかったけれども、アリが『冬の間はうちで食べればいい。その代わり音楽をいっぱい聴かせてくれよ』と言ったとしたら、これはこれでありじゃないですか。Creativitism（クリエイティビティズム）の価値観においては、お金を稼ぐためにあった仕事の捉え方も、成功の概念も変わっていきます」。

『新百姓』で大切にしていることがあります。それが「"答え"ではなく、"問(wèn)い"」ということです?！盒掳傩铡护钉菠堡雴?wèn)いをきっかけに、あくまで読者が雑誌を通して自分で思考し、選び取ることが大切だと考えています。

「でもみんな"答え"を欲しがっているんですよね。答えのない雑誌や書(shū)籍なんて売れなくて（笑）。どこの出版社も出しづらい。だから、自分たちでやるしかなかったんです」。

偶発性や不確実性を、いかに楽しめるか

こうして始まった『新百姓』ですが、おぼけんさんも共同創(chuàng)業(yè)者の施さんも、出版業(yè)も編集業(yè)もまったくの未経験。最初は「正直自信がなかった」と話します。

「こんなの伝わるわけがないと思っていました。0號(hào)を888冊(cè)だけの発行にしたのも自信のなさの表れです（笑）」。

しかし、0號(hào)は即完売。本來(lái)なら増刷も視野に入るほどの売れ行きでした。にもかかわらず広告は一切とらず、全國(guó)流通にも乗せず、どれだけ売れても増刷はしないという方針を貫き、1號(hào)は6966冊(cè)、2號(hào)は8888冊(cè)と上限を決めて発行することで、資本主義的価値観からは一定の距離を置いています?，F(xiàn)在は全國(guó)の獨(dú)立系書(shū)店と『新百姓』のウェブサイトを中心とした直販のみの販売ですが、それでも多くの反響があるのは、同じ思いを抱えていた人が多かったということなのかもしれません。

「あえて紙の雑誌にしたのは、偶発性こそ大切だと考えているから。新しい社會(huì)の仕組みについて考えた時(shí)に、もし全員が安定を求めたら、結(jié)論として資本主義に依存せざるを得ない。ポイントは『偶発性をいかに楽しめるか』なんです。ウェブメディアは、自分の思考の近くにあるものがアルゴリズムによってレコメンドされているだけだから、偶発的とまでは言えない。だから、そこに実際に存在する紙の本にするしかないという発想でした」。

偶発性や不確実性を楽しみ、自ら選び取ってつくり続けていく先に、新しい社會(huì)のシステムは自ずから具現(xiàn)化されていきます。

「『新百姓』は99のテーマを最初に決めて、毎號(hào)一つずつテーマを深掘りしていきます。僕らは日々、水も飲むし、米も食う。そんなふうに日々やり続けていることが終わりのない好奇心の旅になったらすごくないですか。僕は、他者や社會(huì)は変えられないと思っていて。でも、一人ひとりの価値観や世界の見(jiàn)方、解釈が変われば、選択肢や行動(dòng)が変わる。それによって身の回りの環(huán)境が変わる。その先には新しい社會(huì)がつくられて世界も変わっていく。これがもっとも力強(qiáng)い変容のプロセスだと思っています」。